amazarashi武道館ライブ『新言語秩序』の振り返りと感想
2018年11月16日(土)、amazarashiが自身初の武道館ライブを行いました。
7年前に初めて曲を聴いた時から、「このバンドは絶対に売れる」という変な確信を自分の中で持っていましたが、いざこうして武道館に足を運べるところまできたとなると、なんだか感慨深いものがあります......。
そんな記念すべき武道館ライブのタイトルは『朗読演奏実験空間 “新言語秩序”』。
長い年月を経てたどり着いた武道館という場所を“実験空間”と称するあたり、これまでの集大成をぶつけるだけでなく、さらに上へと勇んで進もうとするamazarashiの挑戦的な姿勢が伺えます。
今回はそんな武道館ライブについての個人的な感想をつらつらと書いていきます(長いので飛ばし読みでも大丈夫です)。
武道館ライブに参戦する人々
18:00開場なので、16:30に自分は武道館に到着。
この写真では分かりませんが、武道館前はすでに溢れんばかりの人でいっぱいでした。さすがチケットSOLD OUT。
今回の武道館ライブをするにあたって、amazarashiは衣服関連のグッズにかなり力を入れています。
なので、武道館周りには思い思いの服装をしたamz民が多かったです。
ちなみに自分は、武道館ライブのメインイラストが描かれたTシャツを中に着ただけで、あとは普段着でいきました。あまり服装にはこだわらない派なんです。
武道館ライブのグッズ販売
当日の物販は2箇所に分かれて販売されていました。
- 会場限定グッズなどの物販
- ガチャアイテムの物販(今回初)
最初は「amazarashiがガチャ......!?」と驚きましたが、どうやら他の有名アーティストもガチャをしているそうです。amazarashi以外のライブ経験がなさすぎて全く知りませんでした。
他のアーティストのガチャの中身は缶バッチだけというのが多いらしく、amazarashiのようにいろんな種類が用意されているのは珍しいそう。
そのせいか、ガチャの待機列はとんでもないことになっていました。写真に写っているのは、実際の列の1/4くらいです。
自分は並ばなかったのですが、一体何時間待ちなんですかねコレ......。amz民の足腰の強さが試されています。
会場限定グッズなどの物販も、日中から相当並んで売り切れ続出だったそうです。詳しくはNAVERまとめに「amazarashi武道館 1000人以上の物販待機列、ガチャ列がカオス状態」としてまとめられているので、気になる方はチェックしてみてください。
ファンの方との交流
いつもは一人で参戦して誰とも話さずに一人で帰るという、絵に描いたようなぼっち参戦をかましている自分ですが、今回の武道館ライブでは「なまにく」さん(@nama_niku_amz)という方とお話しすることができました。
なまにくさんは、amazarashiのロゴとハンドスピナーを掛け合わせたamzスピナーを制作している方で、その様子をTwitter上に投稿されています。
それを自分が過去に「amazarashiのロゴの形をしたハンドスピナーが存在するらしい」というブログ記事で紹介したところ、なんとなまにくさんのご好意でamzスピナーをプレゼントしていただけることになりました!
人見知りの自分でも優しく接していいただいて、本当にありがとうございました。amzスピナーは大切にくるくるさせていただきます。
武道館公演祝いの花たち
18:00の開場近くになると、入り口付近に武道館公演を祝う花が一つ一つ飾られていきました。
法人からいただいたお花はこちら。
- ライブ・ビューイング・ジャパン
- 映画「青の帰り道」
- EMTG
- テレビ朝日ミュージック
- イープラス
- タワーレコード
- ファミリーマート
- ローソンエンターテインメント
- アニメイト
- uP!!!ライブパス
- SPACE SHOWER TV
そしてamazarashiファンによるお花はこちらです。
- ナモナキヒト達
- D.O.E
- ファン有志一同
- ファン一同(38名)
- ファン有志(11名)
- じゃいあん愉快な仲間達(2名)
- 中国ファン(2名)
- 中国ファン一同(12名)
合わせてお花の数は計19個。こんなに多くの方から祝福されて、amazarashiのメンバーもスタッフもとても喜んでいることかと思います。
中国のファンからも花束が届いていますが、今年の3月にAimerさんとのアジアツアーで上海・台湾・シンガポールなどでライブをしていますし、海外にもどんどんファンが広がっていくといいですね。
ライブ会場に入場
18:00になると、やっと武道館の中へ入場。
中央のライブステージは巨大なLEDスクリーンで四角に囲われており、それをさらに取り囲むように観客の椅子が並んでいました。
ちょうど、2016年10月に行われた「amazarashi LIVE 360° “虚無病”」のつくりとほとんど同じです。
自分の席はアリーナ西のEブロックでした。武道館の席は、アリーナ(地下2F)・1F・2Fの3つに大きく分かれるのですが、アリーナはステージを少し見上げる形になるので、ちょっと首がつらかったですね。
ライブ開始10分前になると、スマホアプリを使った演出テスト(検閲解除)が行われました。今回のライブはamazarashi初のリスナー参加型のライブです。
「ライブツアー最終日に武道館ライブの演出テストが行われた模様」という記事でも紹介したのですが、今年6月の『地方都市のメメント・モリ』最終公演後の演出テストでは、あまり良い結果は得られなかったそう。
そういうこともあって、スマホの演出は無事に成功するのか少し心配だったのですが、結果的には観客のスマホからどんどん光が放たれて、ライブ前から会場は驚きの声と大きな拍手で包まれました。どうやら、いらぬ心配だったようで良かったです。
ちなみに今回のスマホの演出は「Another Track」というテクノロジーが使われているそうです。興味ある方はぜひチェックしてみてください。
武道館ライブの内容
今回のライブの舞台となる小説『新言語秩序』では、過激な言葉やネガティブな言葉を検閲する“新言語秩序”側の人物・実多(みた)と、それに抵抗する“言葉ゾンビ”側の人物・希明(きあ)が主人公となって物語が進みます。
amazarashiと観客は“言葉ゾンビ”側として、楽曲やスマホアプリを駆使して検閲への抵抗運動を行います。
そして19:00からついに始まった武道館ライブ。今回は計17曲が演奏されました。
- 01 ワードプロセッサー
- 02 リビングデッド
- 03 空洞空洞
- 04 季節は次々死んでいく
- 朗読(第一章)
- 05 自虐家のアリー
- 06 フィロソフィー
- 07 ナモナキヒト
- 08 命にふさわしい
- 朗読(第二章)
- 09 ムカデ
- 10 月が綺麗
- 11 吐きそうだ
- 12 しらふ
- 朗読(第三章)
- 13 僕が死のうと思ったのは
- 14 性善説
- 15 空っぽの空に潰される
- 16 カルマ
- 朗読(第四章・真)
- 17 独白
はじめに「独白(検閲済み)」が少し流れてからの、一曲目は「ワードプロセッサー」。最近のライブの一発目はこの曲から始まることがほとんどです。
「歌うなと言われた歌を歌う 話すなと言われた言葉を叫ぶ」という歌詞も、今回の『新言語秩序』の世界観に合っていますよね。
ステージに映し出された映像も、『新言語秩序』の世界観に沿うように一新されていました。しかも全曲です。
Twitter・Instagram・LINE・YouTube・新聞・雑誌などのあらゆるSNSやメディアを舞台に、amazarashiの曲の歌詞やそれを支持するシンパのコメントが、テンプレート逸脱言語としてどんどん黒く塗りつぶされていきました。
続く2曲目は、今回の武道館公演に向けてリリースされたNew Single「リビングデッド」。
曲が始まると同時に、全観客のスマホが「ブルルッ」と振動し、スマホをステージにかざして検閲への抵抗運動が始まりました。
すると、検閲によって黒く塗りつぶされた言葉がどんどん解除されていく映像が流れてきます。かざしたスマホは曲と連動した演出パターンによって光が放たれ、時に武道館全体を眩しく照らし、時にグラデーションのように会場を彩ります。
自分自身もこのライブをつくる一人なんだと思うと、気持ちが少し上がりました。検閲解除に参加した曲は、他にも「命にふさわしい」「カルマ」「独白」などの計5曲(たぶん)。
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でも正直なところ、「ライブ中にずっとスマホを持つ」「演奏中にスマホをかざす」という行為が生まれたことで、ライブの世界観への没入感は少し薄れてしまったかな......というのが個人的な感想です。
ライブに求めるものは人それぞれだと思いますが、自分はamazarashiの特別な世界観に酔っていたい人なんですよね。ライブという非日常的空間の中にリアルが少しでも混じると、途端に目が覚めてしまうんです。
例えば、「ライブや舞台の最中にそでのドアが少し開いて、廊下の光が暗い会場に漏れてちょっと興ざめしてしまった」「何かの拍子に、舞台の影で着替えている様子が見えて少し冷めてしまった」という経験とかないですかね。
無いという人、繊細すぎてごめんなさい......。
スマホによる抵抗運動の参加は必須ではないのですが、参加具合によってライブ後の閲覧コンテンツ数が変わるので、参加せざるを得ないといいますか。なんだか愚痴みたいになってすみません。
でも個人的には「素晴らしかった!」という感情だけで満たされたライブではなかったので、それも含めての感想としてここに書き留めておきます。
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今回のライブは4曲を演奏するごとに、秋田さんが書き下ろした小説『新言語秩序』の朗読をはさんで物語が進行していきます。
初の武道館ライブにも関わらず途中のMCは一切無しで、あくまでも小説の世界観に則ってライブを進めるというこの徹底ぶり。
朗読の最中には静かにステージが90°回転し、はじめは南を向いていたメンバーも、南→西→北→東→南というように最後には一回転します。
観客がどの方角に座っていても、amazarashiメンバーが演奏する姿をさまざまな角度から楽しめるというむことですね。
秋田さんの演奏姿はというと、もう荒ぶりに荒ぶりってました。足パタパタして体を揺らしてからの腕ブンブンです。もう最高としかいいようがないですよね。
アーティストにとっての勲章とでもいうべき武道館で演奏できるんですから、気持ちが昂ぶってしょうがないという感じでした。
あとアリーナ席からは確認できませんでしたが、秋田さんも“amazarashi × CA4LA HAT”も被っていたそうです。粋な計らいをしてくれますよね。
体調不良などで今年のライブ演奏を離れていたキーボードの豊川さんも、武道館ライブでは復活されていたので安心しました。
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演奏した曲はというと、amazarashiの原点ともいうべき「光、再考」や、秋田さんにとって思い入れの深い「スターライト」などが演奏されなかったのでビックリしました。あと今年12月公開の映画『青の帰り道』の主題歌「たられば」の出番もなし。
それらに変わって、「自虐家のアリー」や「吐きそうだ」など、小説『新言語秩序』の世界観に寄せた曲を起用しています。
あとはライブ映えする曲というか、後半になるにつれて盛り上がりが最高潮になる曲なども多くありました。「命にふさわしい」「性善説」「カルマ」とか。
これらの曲はライブで初めて聞いた人でも心を持っていかれるような、そんな強いパワーや迫力があるので、ライブ後に「あの曲が良かった」という感想を話している声をよく聴きました。
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でもやはり今回のライブの主役となったのは、なんといってもラストの曲「独白」ではないでしょうか。
「独白」演奏前に小説『新言語秩序』の第四章が朗読されましたが、事前にスマホアプリで公開されていた内容とラストが大きく変わっていました。
“新言語秩序”側の実多は、多くの“言葉ゾンビ”に囲われて窮地に陥るも、隙を見計らってマイクを差し出してきた希明を殺害するというバッドエンドで幕は閉じます。
しかし、実はその物語は“新言語秩序”が検閲してラストを書き変えたものであり、本当の第四章・真では実多は希明からマイクを受け取り、自身の思いの丈を話そうとするシーンで終わりました。
ライブではてっきり第五章が追加されると思っていたので、まさかルート分岐するとは思ってもいなかったです。
そして流れるラストナンバー「独白」。
New Single「リビングデッド」のカップリングに収録されたこの曲は、大半の歌詞が検閲済みでノイズもひどく、何を歌っているのかほとんど聞き取れません。
ライブではこれらの歌詞が全て明らかにされましたが、この「独白」は秋田さんではなく、実は実多視点のものだったことが分かりました。
「私が私を語るほどに 私から遠く離れてしまうのは何故でしょうか?」
言葉を取り締まる“新言語秩序”として活動する実多が、このような言葉を吐けば検閲されるのも当然ですよね。
「この物語はフィクションであり、実在する事件、団体、人物とのいかなる類似も■■■■■■■■■■■■■■■」という歌詞も、その後に続く言葉は「一切関係ありません」のようなお決まりの言葉が続くと予想した人も多いかと思います。
しかし、実際は「いかなる類似も必然の一致だ だが現実の方がよっぽど無慈悲だ」と歌っており、この物語の中で起きた出来事は、決して空想だけのお話ではないと警鐘を鳴らしています。
ライブ前のインタビューで、秋田さんは「ここを検閲したらミスリードしてくるかな、というように楽しんで作りました」という趣旨のコメントをしていましたが、見事にやられましたね......。
小説の真実、実多による独白、歌詞のミスリードと、「独白」にはさまざまな仕掛けが施されていましたが、実際の演奏やパフォーマンスも圧巻でした。これまでのライブでも見たことがないような、圧倒的な破壊力。
そして「嬉しくて嬉しくてたまらなかった言葉」を歌い上げた時の秋田さんの気持ちの入りようがもう......涙ものです。
観客が初めて聴く「独白」という曲を、初の武道館ライブのラストに持ってくるなんて、そうそうできることではないと思います。
ですが、これまで演奏された16曲はまるで壮大な前座だったとでもいうような、見事なカタルシスを「独白」は起こしてくれました。
ライブ終演後
ライブ後は暗転して音源を一曲流すといういつもの流れではなく、今回の新言語秩序プロジェクトに関わった人たちのスタッフロールが流れました。
流れている間はずっと拍手が鳴り止まなかったです。「まさに感動......!」で終わればよかったんですが、その後がちょっと......。
会場を出ると、ライブのセットリストが書かれたポスターが掲示してあり、それを撮影しようと人がごった返しになっていました。
あんまりこういうことは言いたくないんですが......、ぶっちゃけポスターに関してはいろいろ物申したいことがあります。
- 入口付近にポスターを置いたため、会場を出たい人も撮影した人も動けない
- 撮影希望者の列を整理するスタッフがいない(大阪会場などではやっている)
- そもそも観客1万人以上に対してポスターが数枚というのは少なすぎる
武道館ライブで良い気持ちになって外に出たものの、このような状況だとせっかくの気持ちも落ちてしまうので、今回のライブはスタッフもいろいろ大変だったとは思いますが、今後はもう少しその辺りも配慮していただけると助かります......。
武道館ライブ『新言語秩序』を振り返って
小説『新言語秩序』を初めて読んだ時に、「なぜ実多視点で物語が進んでいるんだろう?」ということがとても不思議でした。
実多は言葉を取り締まる“新言語秩序”側で、それに抵抗する希明・amazarashi・観客は“言葉ゾンビ”側であり、立場が全くの逆だからです。
しかし、実多が最後に“言葉ゾンビ”側になったことで、「この場面を描きたかったんだな」と合点がいきました。
また、Twitterでみた情報なんですが、今回の小説の主要人物である実多と希明の名前には、アナグラムによるトリックが仕掛けられているのではという意見がありました。
- 実多(MITA) 希明(KIA)
- MI TA KI A
- I'm A KI TA(私は秋田)
これを意図して行ったのかは分かりませんが、小説が実多視点で進むことや、「独白」の歌詞の内容などから、言葉を殺す側・生かす側の二面性を誰もがはらんでいて、だからこそ人を形作る言葉の可能性を秋田さんは訴えたかったのかなと思いました。
死にたい自分を説き伏せるために、自分で自分を言い負かして肯定する曲を作ってきた、実にamazarashiらしいメッセージではないでしょうか。
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amazarashiは今回の武道館ライブを行うにあたって、数々の取り組みや挑戦を行ってきました。
《 楽曲・ライブ関連 》
- New Single「リビングデッド」発売
- MV「リビングデッド」の検閲
- カップリング「独白」の検閲
- スマホアプリ『新言語秩序』配布
- 小説『新言語秩序』公開
- スマホによる検閲解除のライブ演出
- ライブビューイング・ディレイビューイング
《 グッズ関連 》
これらのプロジェクトが動いていく中で、ファンの間で楽しみの声が上がる一方、不安や不満の声が上がったのも事実です。
特に今回のプロジェクトは、小説の世界観やスマホアプリの活用、衣服関連のグッズへの注力など、若年層を意識したプロモーションが行われました。
10〜20代のファンは最近ぐんぐん伸びていますが、もともとamazarashiの音楽を初期から聞き込んでいたファンはもう少し世代が上の方が多く、今回のプロジェクトを通して「amazarashiは変わった」と感じた方もいるのではないでしょうか。
それを表すように、New Single「リビングデッド」のAmazonの評価は他作品と比べて明らかに低評価が多く、賛否両論になっています。
ですが、個人的には「歌いたい歌を歌う」という姿勢こそがamazarashiだと思っているので、プロモーションや演出などの変化はあれど、その根っこを貫くスタンスがブレない限り、amazarashiは変わったとは個人的には思いません。
それこそがamazarashiが最も大切にしているであろうフィロソフィーであり、冒頭で話した「amazarashiは絶対に売れる」と自分が確信した理由の一つでもあります。
来年4月からは過去最多の14箇所15公演のライブツアーも決定しましたし、おそらくフルアルバムの発表もあるでしょう。
秋田さんは一生音楽を続けていくと自身で決めているので、自分もamazarashiの音楽活動を今後も応援していこうと思います。